やんわりとぬーりーや

やんわりとなにをかこうかしら。放置気味になりそうですが、毎日頑張ります!

中国の大学・大学院のレベルと教育事情 ―留学を振り返って―

 帰国してからだいぶ経ったが、今になって思うと、というのと留学時代の友人たちの話を聞くにつけても、中国の大学・大学院のレベルと教育事情について感じたことを書かないといけないような気がしてきた。中国留学の話だと、語学留学系の話が多いような気がして、そういう意味でも理系の大学院事情というのは貴重かも知れないと思っている。
 記事には多分に主観が含まれ、また想像で補っている部分も多いこと、また名指しで何大学のどこ学科などとは言えないのでぼかす意味での情報も含まれていることを最初にご了承頂きたい。
 それから、私は中国の大学が嫌いなわけでもただ非難したいわけでもない。思っていたのと違う理不尽な結果になる人がなるべく出ないように情報を共有したいというだけである。実際、個人的には中国留学して得たものも多かったし、感謝こそすれ文句を言う筋合いはない。

私の留学した大学

・理系では特に科研方面でかなり良いとされる大学
・大学院の専門留学だが、中国語の授業や学部の授業も受けてきた
・日本の大学院から交換留学(単位取得等に関しては制限などなくお気楽)

学部教育は○、大学院教育は△、

 学部教育に関しては、日本の大学と大きく変わるようなことは感じなかった。授業もよく整備されているようで、特段不自由を感じるようなことはなかったし、授業の内容も面白かった。
 しかし、大学院教育の方はといえば、私のようなそこそこレベルの学生には辛いものだった。よく言えばハイレベルを求められる自由放任主義、悪く言えば面倒見が悪い。
 中国の理系の良い方の大学で大学院があるという所は、日中の人口比を考えても相当なエリートぞろいなので、中国人的には勝手に一人で自由研究してちょこちょこっと教授からアドバイスをもらうとハイレベルな研究になるのかも知れない。しかし、2ヶ月に一度程度、ゼミのために会議室を貸し切ってピザを食べながら教授がちょいちょい研究内容について指摘するようなスタイルは、日本で毎週ゼミで細かく指導をいただき、教授だけでなく研究室のメンバーの間でも意見を言い合っていたのと比較をすると、全然構ってもらえていないし研究室の密さがあまりないような印象だった(研究室によっては事情はかなり異なるようではある。それか私の知らないところで仲良く研究論議をしていたのかもしれないが)。大学院生は教育を受けるものというより研究員要員であり、独りでも勝手に優秀な研究をすることが求められているような感じがした。
 なお、実験系の研究機材などは概ね豊富・豪華ということで、日本で研究するよりもよいという人もいるかも知れない。
 私は交換留学生なのでどうでもよかったが、これが正規の大学院留学ともなれば苦労は一際すごいことだろう。そういえば修士1年ではたくさん単位も取らないといけないようだったから、まあこれは日本の大学院でも同じだが、上記の事と合わせて、かなり辛いものになるのではないか。

留学生教育は○、留学生の扱いは△

 授業科目に関しては、英語開講科目なども各分野あったし、中国語で受ける授業でも「レポートは英語で提出してもいいよ」と教授が言ってくれたりで、良い面もあった。また、日本では日本語学校に頼ってしまうような語学の授業も、中国では大学内で行われていて、ちゃんとした中国語の授業を、読解・聴解・作文・会話など豊富なラインナップから各種レベルで参加することが出来、また参加している留学生も各国の粒ぞろいといったところで人脈的もおいしい。
 ただ、聞いた話では、留学生の教育に対応しきっていない部分もあるようだ。
 ある友人の話では、研究をするために必要な資格を取得するための試験が入学後すぐに中国語であり、突然のことなのでろくに準備もできずに参加することになったらしい。この資格がなければ研究活動が認められないのでニアリーイコール退学とのこと。中国人にとっては全国統一大学入試の復習のようなことで思い出しながら軽く超えられるハードルらしいが、外国人にとっては、専門の内容を突然外国語で書かれても困る。その友人は、たまたま近くに居た日本ファンの中国人学生カンニングをさせての親切で難を逃れたとのことだが、ヒヤリとする話である。レベル的には問題ない学生も言語の壁によって排除されてしまうのだ。そんなんだったら最初から入学させんな。
 また、これは私も一部片鱗を見たのだが、卒業要件や退学事項等、重要な事柄に関するアナウンスが少ないという問題だ。入学時にこれこれこれをすると退学になりますよみたいなことが中国語と英語で書かれた分厚い冊子のようなものを受け取るが、日本で日本語で書かれたあの卒業要件の冊子を読むのにも神経を使ったものだというのにそれを外国語で読むというのは骨が折れる。ある友人は、退学事項に抵触する行為を知らず知らずにしていたが、何のアナウンスもなく、突然ビザが更新できなくなって、あれよあれよといううちに……(後略)。これは重要なことに限った事ではないが、学生寮の一般的なアナウンスも、中国語の内容に比べて英語は極めて簡易な内容にとどまっていたように思う。ともすればネットワークからはぐれて情報弱者になってしまいがちな留学生に対する情報発信がとてもおろそかだと感じる。正規留学しようという人は同じ立場の友人を日本人に限らず作って常々確認するなど、くれぐれも注意されたし。
 (案外、日本の大学でも、留学生は同じような思いをしているのかも分からないが……)
 そういえば、非常に重要な奨学金の手続きが終わっていないという連絡が、締め切り当日に電話でかかってきたことを思い出した。いろいろと手際が悪そうだ。こちらとしては全て手続き等は終わって中国に来ているつもりをしていたので、突然のことで驚きを隠せなかった。
 それから、研究室選びだが、留学生課の事務職員は殆ど何もしてくれないどころか、この件で問合わせてもメールがスルーされることすらある。交換生に限った事かも分からないが、何人かの教授にメールしてもスルーされることはザラである。根気づよく目星をつけた教授何人かに連絡をとってみるべし。なお、教授の情報が公開すらされていないところが学科によってはある。お手上げだ!

中国に関する研究をしてはダメ

 完全に実験系で、中国の事情が関係しないタイプの理系は良いが、多少文系の要素が混じってくるような分野もあると思う。そうしたとき、日本と中国の比較など、出身国と中国の比較研究をしたがる留学生は多いようだ。しかし、教授側としてはあまり好ましいことだとは考えていないようで、例えばある友人は比較研究で修了しようとしていて毎回のゼミでもOKが出ていたはずなのに、修論締め切り間際で「日中の比較はだめでしょう」ということになったとか。私も日本にいた時から計画してきた中国に関する内容を中国の教授に潰されて、帰国後に復活したので遠回りをしてしまった。
 外国人に中国の内情を探られるのがよろしくないというよりは、外国人ごときが中国の何を分かって研究なんてしているつもりだ・外国人が中国のその事情を知って何の意味が有る・外国人なら外国人らしく外国の知見を中国に持ち込め、と本音のところでは思われているのかもしれない。そういえば教授からは日本の資料を渡されて、「これをやりなさい」と言われた。いや、私の研究テーマと全く関係ないですけど……、や、面白いテーマだというのは否定しませんけれども。
 (日本でゼミをしていたとき、中国人留学生が「日本の知見を学び中国に活かしたい」という趣旨の研究をしようとしていて、完全にスルーされて「中国の事情をもっと明らかにしてよ」と言われていたのを思い出すと、これは案外万国共通のことなのかもしれない)

中国留学で得られたこと

 中国と関係の深い日本人の友達ができたこと、同じ専門分野の中国人の友人ができたこと、日本の自分の専攻の中だけではあり得なかったようなタイプの人々と次々と否応なく知り合えたこと、異国でいろいろ経験できたこと、中国語が上達したこと、おいしい中華料理を食べたこと、etc

中国留学でやり残したこと

 もっとちゃんといろいろ研究の調査がしたかった、研究室のメンバーとはもっと深く関わりたかった、もっと観光地的な整備をされていない多くの土地(留学先の都市の中のいろいろな部分という意味)を回りたかった、etc

もしも中国留学をするならば(主観)

コースラインナップ  オススメ度
1.専門交換留学一年  ★★★★★★★
   :制約が弱く、勝手気ままな交換生として、中国語も専門も摘んでこれる。
2.専門交換留学半年  ★★★★★★☆
   :半年だと溶け込んで面白くなったところで終了してしまう。
3.語学留学一年    ★★★★★☆☆
   :語学だけやっていればいいのは楽しそうだけど少し勿体無い気もする。
4.専門正規留学(ダブル) ★★★★★☆☆
   :日本の院教育と中国の院教育を両方受けられるのが魅力。大変そうだが。
5.語学留学半年    ★★★★★☆☆
   :語学で半年だと、どれくらい身につくのかと思う。来ないよりは全然いい。
6.専門正規留学(学部) ★★★★★☆☆
   :4年もいれば中国語も中国事情も専門もちゃんと精通するのでよいだろう。
7.専門正規留学(修士) ★★★★☆☆☆
   :学部から中国というのでないなら上述の通りいろいろ大変そう。
8.専門正規留学(博士) ★★★?☆☆☆
   :博士のことは知らないが、知り合いは来て後悔しているっぽかった。

 なお、現在の私は、出張や駐在をしてみたい気持ちはあるが、再度中国で学生をするのはあまり気が進まない。

総評

学部レベル・学部教育レベルは十分に発展していると思う。
大学院レベルは高いが、大学院教育レベルはそこそこではないかと思う。
留学生に対する配慮は概ね悪く、突然何か起こるかもわからないと思ったほうが良い。
一方で、そうした厳しい環境を乗り越えることは人生においてマイナスばかりではないであろうことも付け加えておきたい。

最後に

「いやいや、それは違うでしょ。勝手なこと書きすぎ!」とか「それは俺もそうだった!」みたいな話があれば、それぞれお教え下されば幸いです。
 そういえば、みなさん、あけましておめでとうございました。